小規模企業共済加入シミュレーション

こんにちは。大阪市福島区の税理士 樋口です。

本日は個人事業主等の節税対策としてよく活用されている小規模企業共済についてシミュレーション等を交え、メリット・デメリットについて記載します。
私自身
今年開業して、すぐに加入しました。掛金は住宅ローン控除がしばらく使えること、開業したてなので様子見もかねて、最低金額の1,000円にて。自分の所得状況や家計に必要なお金を勘案しながら、掛金を増減しようと思っています。
以前でしたら、掛金を減額する場合は「著しい事業の悪化」等が要件でしたが、制度改正により平成28年4月1日以降は、そのような要件は不要となりましたので、簡単な手続きをすれば自由に増減が可能です。

少額であっても、納付期間(納付期間は受取額や受取時の税金計算等に影響します。)には含まれるので、加入予定の方は少額でも良いので早めの加入をおすすめします。

また、創業融資を受ける予定の方は、小規模企業共済に銀行経由で加入すると創業融資(信用保証協会の保証付融資)の利率が0.1%安くなる銀行もあるので、その時の加入をおすすめします。

以下に簡単に小規模企業共済の概要等を記載しますが、詳しくは独立行政法人中小企業基盤整備機構HPを参照下さい。

制度の概要

個人事業主や小さな法人の役員の退職金制度。
小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営。

加入できる人

個人事業主や小規模な法人の役員等。
業種や従業員数により異なる。

掛金月額

1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できる。
増額・減額可能。
月払い・半年払い・年払いを選択できる。前納も可能で、一定割合の前納減額金が受取れる。

掛金の税務上の取扱い

実際に払い込んだ掛金の全額が、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となる。

受取時の税金等

共済金等を一括受取…退職所得扱い
共済金等を分割受取…公的年金等の雑所得扱い
※一括・分割併用受取も可能
この他にも中途で解約した場合等様々な取扱いがあります。

シミュレーション

では加入によってどのくらい効果があるのか?計算してみます。

前提条件

掛金納付期間25年
掛金の請求事由は個人事業の廃業(共済金A)で一括受取(退職所得扱い)
課税所得(=所得-所得控除)は500万で25年同額

計算式
掛金月額               10,000             20,000             30,000          40,000           50,000
掛金年額 ①×12           120,000           240,000           360,000        480,000         600,000
年節税額(※1)               36,500             73,000           109,500        146,000         182,500
実質掛額 ②-③             83,500           167,000           250,500        334,000         417,500
実質掛額総額 ④×25        2,087,500        4,175,000        6,262,500      8,350,000     10,437,500
共済金A(※2)          3,620,200        7,240,400      10,860,600    14,480,800     18,101,000
退職所得控除額        11,500,000      11,500,000      11,500,000    11,500,000     11,500,000
共済金Aの税金                        –                      –                      –        225,000         567,300
受取額 ⑥-⑧        3,620,200        7,240,400      10,860,600   14,255,800     17,533,700
実質返戻率 ⑨/⑤ 173% 173% 173% 171% 168%

※1 所得税と住民税の合計節税額。
※2
 共済金Aは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の加入シミュレーションより算出。

Aだと、年83,500円(④節税考慮後実質掛額)を25年間支払い続け、廃業時に3,620,200円を受け取ることができます。返戻率にして173%となり、かなり良いリターンが得られます。
D・Eで、実質返戻率が173%を下回るのは、共済金Aが退職所得控除額(25年で計算、800万+70万×(25年-20年))を超えるため、共済金Aの受取時に税金が発生するからです。

これらのシミュレーションも考慮して、メリット・デメリットについて記載します。

メリット

(1)最大120%相当額が戻ってくる、実質返戻率は170%超になることも(老後の資金確保)

シミュレーションAの場合、掛金総額300万(12万×25年)×120.673…%=3,620,200となり掛金総額に対して120%相当額が戻ってくることがわかります。シミュレーションは、毎年の節税額も考慮した実質返戻率にて計算しています。

(2)掛金の全額が所得控除の対象(所得税、住民税の節税効果あり)

シミュレーション③の部分が節税額となります。課税所得が高ければ高いほど節税額は増加します。
住宅ローン控除で所得税がゼロになる方(ゼロになるかならないかのきわどい方は除く)は、所得税の節税効果はないと考えて下さい。

(3)共済金等の受取時は「退職所得」扱いとなり、税金負担が大幅に軽くなる

シミュレーションA・B・Cのパターンのように⑦退職所得控除額以下であれば、受取時の税金はかかりません。
一括受取だけでなく、分割受取や一括・分割受取の併用も可能です。分割受取の場合は、「公的年金等」として取り扱われます。
「公的年金等」にも公的年金控除があるため、税負担は優遇されています。

(4)納付した掛金の範囲内で、事業資金等の貸付が受けられる

急な資金需要にも解約せず対応できます。
利率は加入者の借入理由により異なりますが、一般貸付だと1.5%。
任意の解約も可能ですが、掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満の場合は元本割れとなります。

(5)掛金が月1,000円から選択可能であるため、無理のない範囲で掛金の支払いが可能

子供の教育費で出費がかさむ時期は掛金を減額し、余裕がでてきたら増額する等の選択が可能。

デメリット

(1)掛金の期間が長い

何歳から加入するのか、いつ事業を廃業するのかといった個々の状況にもよるが、加入期間は長期間となります。

(2)元本割れのリスクあり

任意解約の場合、掛金納付月数が240ヶ月(20)未満の場合は元本割れとなります。

(3)共済金等の受取時に課税される場合あり

シミュレーションD・Eの場合。ただし、納付期間を長くすることで、退職所得控除額が増加し、課税されない場合もあります。

(4)キャッシュは減少する

将来的には共済金等でキャッシュは増加して戻ってきますが、それまでの間シミュレーション④の部分のキャッシュは毎年減少します。

おわりに

加入すべきかどうかは、家計・所得の状況や今後の事業展望(法人成りして事業を拡大していく等)により異なると思いますが、節税したい方や老後が国民年金だけでは不安という方は加入を検討してみてはどうでしょうか。

自分の所得でシミュレーションして欲しい方や他の節税策が知りたい方は樋口税理士事務所まで気兼ねなくご連絡下さい。


 

 

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