中小企業退職金共済

こんにちは。大阪市福島区の税理士 樋口です。

本日は退職金制度における中小企業退職金共済(中退共)について。

中小企業における退職金制度の導入割合は、2000年で89.3%あったものが、その後年々減少し、2016年では69.8%となっています。また69.8%のうちの50.2%が中退共を活用しています。(東京都産業労働局統計調べ)
私がこれまで担当をしてきた会社でも3~4割くらいの企業が加入していましたし、高い割合で中退共を活用していることが分かります。

制度の概要

法律で定められた社外積立型の退職金制度で、シンプルな仕組みで安定した利回りがのぞめるため、中小企業で多く利用されている。
・事業主が中退共と退職金共済契約を結ぶ
・事業主は毎月の掛金を金融機関に納付(全額損金、必要経費となる。)
・従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われる。

加入できる企業

業種 常時雇用する従業員数 資本金または出資の総額
一般業種(製造・建設業等) 300人以下 3億円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
サービス業 100人以下 5千万円以下
小売業 50人以下 5千万円以下

※従業員数または資本金で判定。両方超えるときは加入できない。
加入後上記範囲を超えたときは、契約解除。(他の制度へ移換も可能。)

加入できる従業員

・中小企業の事業主に雇用されている従業員。
・パートも加入できる。(掛金も別枠あり。)
・従業員である実態があれば家族であっても加入できる。
・法人の役員(使用人兼務役員は加入可能)や個人事業主は加入できない。

掛金月額

掛金月額の種類
5,000円 6,000円 7,000円 8,000円
9,000円 10,000円 12,000円 14,000円
16,000円 18,000円 20,000円 22,000円
24,000円 26,000円 28,000円 30,000円

この中から従業員ごとに任意に選択できる。
掛金は12ヶ月を限度として前納できる。(新規契約の場合は1~2ケ月後でないとできないので決算間近での加入は注意が必要。)

受取時の税金(従業員)

・一時金払いとして支払われる退職金
→「退職手当等」とみなされ、他の所得と区分して課税される。

・5年または10年間にわたる分割払いによる退職金(一定の要件を満たす必要あり)
→国民年金や厚生年金等と同様に公的年金控除の対象として「雑所得」として取り扱われる。

・一時払いと分割払いを組み合わせることも可能

・解約手当金(従業員が在職中で契約解除した場合)
→「一時所得」として取り扱われる。

メリット

①掛金は、法人企業は全額損金、個人企業は全額必要経費。
②新しく中退共に加入する事業主に掛金月額の1/2(上限5,000円)を加入後4ヶ月目から1年間、国が助成。掛金から減額される。
同居の親族のみを雇用する事業主等は助成対象外。月額変更(増額)による助成もある。
③加入後も面倒な手続きや事務処理がなく、管理が簡単。
④従業員が加入後3年7ケ月以上勤務すれば掛金総額を上回る退職金が積み立てられる。

デメリット

①事業主が受け取れない。
②退職理由により給付額に差をつけることができない。
③懲戒解雇した従業員にも退職金が支払われる。(減額は可能だが、減額した分が事業主に返金されない。)
④従業員が加入後2年未満で退職すると掛捨て部分が生じる。
⑤掛金を減額する場合の手続きが面倒(従業員の同意等必要)
⑥融資を受けることはできない。(共済融資はH14に廃止された。)
⑦年齢制限を設けることができず、実際に退職するまで掛金負担が必要。
⑧在職中の死亡の場合に遺族への生活保障が弱い。

おわりに

中退共に加入する場合は、メリット・デメリットの双方を考慮する必要があります。
全額損金となるのは魅力的ですが、中退共だけで退職金制度を実施すると、定年も自己都合も支給額が同額となったり、退職金規定で計算された退職金額よりも、中退共から支給する金額の方が多くても、そのまま退職者へ支給されるといった問題が生じます。
したがって、中退共を活用する場合は、自己都合退職金の範囲内で中退共を利用し、最終的に退職するときは、退職金規定で計算した退職金から中退共で支給される金額を差し引いて、残額を会社から支給するといった方法が考えられます。

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